こんにちは、八咫烏行政書士事務所の櫻井です。
今回は、建設業許可取得を目指す方の中でも特に相談の多い「専任技術者の経験証明のコツ」と、それに絡む「法人化のベストタイミング」について解説します。
◆ 専任技術者とは?(おさらい)
建設業許可を取得するためには、営業所ごとに「専任技術者」を設置する必要があります。
専任技術者の資格は、以下のどちらかで満たすことが一般的です。
- 学歴+実務経験(例:大学卒なら3年以上など)
- 実務経験のみで10年以上
今回は、特に後者の「実務経験10年」で申請を目指す方のために、経験の証明の仕方と注意点を掘り下げていきます。
◆ 実務経験10年は「個人でも法人でもOK」
まず大事なポイントはこれです。
✅ 実務経験は、個人事業主としての経験でも認められます。
「法人で働いていないから無理だ」と思っている方もいますが、それは誤解です。
実際、個人事業主としての元請け・下請け経験も“技術者としての経験”としてカウントされます。
◆ ではなぜ「法人のほうが有利」と言われるのか?
理由はシンプルです。
法人の方が“証明資料が揃いやすい”からです。
法人では…
- 契約書や通帳が会社名義で整っている
- 書類保存義務がある
- 税理士が関与して帳簿が正確に管理されている
一方、個人事業では…
- プライベートと仕事の口座が一緒で証明しづらい
- 契約書を交わさず口頭で済ませていたケースもある
- 工事内容や金額が書かれた資料が見つからない
このように、経験があっても証明が難しい=許可が取れないというケースが起こりがちなのです。
◆ 経験証明のコツ3つ
(1)年度ごとに工事内容を整理する
「どの年に・どんな工事を・どんな立場でやったか?」を、1年ごとにメモしておくと後がラクです。
たとえば、2020年4月〜2021年3月に「外構工事を〇件」「下請けとして従事」など。
これをベースに証明資料をそろえていきます。
(2)書類は“組み合わせ”でOK
- 注文書(発注者と工事内容)
- 請求書(工事完了の証拠)
- 通帳の入金記録(実際の支払い)
この3つが揃っていれば説得力が強くなります。
一部しか残っていない場合でも、補足資料や第三者証明でカバーできます。
(3)第三者証明(工事証明書)を活用する
元請けや施主さんから「この人が実際にこの工事を担当した」という証明書(様式第5号など)を出してもらえれば、非常に強い証明になります。
特に「自社工事(個人名義)」の場合は、外部の証言が重要です。
◆ 法人化したほうが良い理由と注意点
ここまでで「経験は個人でもOK、でも法人の方が証明しやすい」ということがお分かりいただけたと思います。
では、「じゃあ法人化してから許可を取ればいい?」というと、それも少し注意が必要です。
◆ 法人化のタイミングが命!よくある失敗例
たとえばこんなご相談:
「これから法人を作る予定です。法人名義で建設業許可を取りたいです!」
実はこのケース、そのまま申請すると“経験ゼロ”とみなされてしまうことがあります。
なぜなら、**法人と個人は別の存在(=別人格)**だからです。
個人として10年間の経験があっても、設立したばかりの法人では
「この法人には実務経験がない」と判断される可能性があるのです。
◆ 対策①:個人で許可 → 承継で法人に引き継ぐ
一番安全で確実なのがこの方法です。
- まず個人名義で建設業許可を取得
- その後、法人化
- 「事業承継申請(変更承認)」で法人に許可を引き継ぐ
これなら、個人の経験もそのまま活かせて、スムーズに法人での活動に移行できます。
ただし、承継には一定の期限や条件があるため、法人化の前に専門家にご相談いただくことをおすすめします。
◆ 法人化のメリットまとめ
メリット | 説明 |
---|---|
書類が残りやすい | 契約書・通帳・帳簿などの保存義務があるため、証明に強い |
信用が高まる | 金融機関・元請け・取引先からの信用が上がる |
人材を雇いやすい | 社会保険対応などで、安定した雇用環境を提供できる |
経費管理・節税面でも有利 | 利益が増えるほど法人の方が税制面でも有利になるケースあり |
◆ 結論:個人の経験は活かせるが、戦略が必要!
✅ 個人の経験 → 許可取得に十分使える
❗ ただし、証明資料をそろえるのは少し大変
🏢 法人化すると証明がラクになり、信用もUP
⚠ タイミングを間違えると、経験が「なかったこと」になりかねない
◆ ご自身のケースに合った最適な方法をご提案します
「法人化を考えているが、許可取得はどうするべき?」
「10年以上やってきたが、書類が揃っていない」
「元請けとの関係が終わっていて、証明が取れない」
そんなお悩みに、行政書士として丁寧にお応えしています。
建設業許可の取得、法人化のサポート、許可の承継までワンストップでお手伝い可能です。
どうぞお気軽にご相談ください。
コメント