八咫烏行政書士事務所|遺言・相続
遺言書は家族に内緒でも大丈夫?
「秘密にしたい」と「見つけてほしい」の間で
遺言のご相談では、
「遺言書を書いたことは、子どもたちに言わなくてもいいですか?」
という質問を受けることがあります。
内容を聞かれたくない。
一人だけに多く遺す予定だから、生きているうちから揉めてほしくない。
遺言を書くほど自分が弱っていると思われたくない。
あるいは、
「これは自分の財産なのだから、最後くらい自分で決めたい」
という方もいるでしょう。
その気持ちは、決して不自然なものではありません。
遺言書を作ったからといって、その内容を生前に家族へ説明しなければならないわけではありません。
01|「内容を秘密にする」と「存在まで分からなくする」は別
ここは、分けて考えてみましょう。
たとえば、
「遺言書を作ったことだけ伝えて、内容は言わない」
という方法もあります。
反対に、
「遺言書を作ったこと自体、生前は誰にも知らせない」
という選択もあります。
どちらが正しいという話ではありません。
せっかく自分の意思を書き残しても、その存在を誰も知らなければ、その意思を実現するまでに遠回りしてしまう可能性があります。
02|自宅にしまっておけば大丈夫?
自筆証書遺言は、自分で保管することもできます。
ただ、自宅で保管する場合には、
- どこにあるのか分からない
- 遺品整理の途中で見落とされる
- そもそも遺言書があることを家族が知らない
- 紛失・破棄・改ざんなどのおそれがある
といった問題が考えられます。
法務省も、自筆証書遺言について、遺言者の死亡後に相続人等に発見されなかったり、破棄や改ざん等が行われたりするおそれがあることを、自筆証書遺言書保管制度が創設された背景として挙げています。
それだけでは、少し心配が残ります。
03|誰にも言いたくないなら、法務局に預ける方法も
自筆証書遺言には、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」があります。
この制度を利用すると、作成した自筆証書遺言を法務局の遺言書保管所で保管してもらうことができます。
法務局に保管された自筆証書遺言については、相続開始後の家庭裁判所による検認も不要です。
さらに、この制度には「指定者通知」があります。
遺言者が希望しておけば、法務局が遺言者の死亡を確認した際、あらかじめ指定した方へ、遺言書が法務局に保管されていることを通知してもらうことができます。
現在は、通知対象者を3名まで指定できます。
でも、
自分が亡くなったあとには、その存在に気づいてもらう。
そんな準備もできます。
04|法務局は「内容が適切か」までは判断してくれません
ここは注意が必要です。
法務局へ自筆証書遺言を預ける際には、遺言書の形式について外形的な確認が行われます。
しかし、法務局が遺言の内容について法律相談をしてくれるわけではありません。
誰に何を遺したいのか。
その書き方で、本当に自分の意思を実現できるのか。
遺留分など、後から問題になりそうな事情はないか。
こうした部分は、遺言書を作成する段階で別に検討する必要があります。
05|公正証書遺言という方法もあります
もう一つ、代表的な遺言の方法が公正証書遺言です。
公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言です。
自筆証書遺言とは、作成方法も保管方法も異なります。
そのため、
「自筆で書いて法務局に預けるのがいいのか」
「公正証書遺言にした方がいいのか」
は、単純にどちらが優れているという問題ではありません。
財産の内容、家族関係、遺したい相手、遺言内容の複雑さなどによって、適した方法は変わります。
もちろん、公正証書遺言には公証人手数料などの費用がかかりますし、自筆証書遺言書保管制度にも費用を抑えられるなどのメリットがあります。
大切なのは、「どちらが上か」ではなく、その方の事情にどちらが合っているかです。
06|なぜ、家族に知られたくないのでしょう
私は、ここが一番大切だと思っています。
相談を受けて、
「家族に秘密にできますか?」
と聞かれたとき。
制度だけ説明するなら、
「できます」
で終わるかもしれません。
でも、もう一つ聞いてみたい。
そこに、家族との長年の関係があるかもしれません。
特定の子どもへの想いがあるかもしれません。
お世話になった家族以外の誰かに遺したい事情があるかもしれません。
あるいは、
「自分のことは最後まで自分で決めたい」
というだけかもしれません。
理由によって、遺言書の作り方も、保管方法も、亡くなった後の準備も変わってきます。
07|遺言書は、書いて終わりではありません
遺言書を作る目的は、
「遺言書という紙を一枚残すこと」ではない
と私は思っています。
誰に何を遺したいのか。
なぜ、そうしたいのか。
そして亡くなったあと、その意思がきちんと届くのか。
そこまで考えて、初めて遺言は意味を持ちます。
家族に話したくないのであれば、無理に話す必要はありません。
ただ、
「秘密にすること」と「届かなくすること」は違います。
誰にも言いたくない。
それも一つの想いです。
だったら、その想いを守ったまま、最後にはきちんと届く方法を考えればいい。
八咫烏行政書士事務所では、最初から「遺言書を作りましょう」と決めつけるのではなく、
「どうして遺言を残したいと思ったのですか?」
というところから、お話を伺いたいと考えています。
想いを、カタチに。
そのために、まず想いを聞くことから。

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